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新しいお店の作り方について(超主観交じりで)語ってみる

これはコープさっぽろ オープン社内報  Advent Calendar 2021 22日目の記事です。

お疲れさまです。開発本部の山崎です。

みなさん、クリスマスまでのカウントダウンも残り僅かとなりましたが、ちゃんとコープのクリスマスケーキの予約は済んでいますか?

山崎としては、毎年、本能の赴くままに「2個」予約しています。

食欲と反比例する肉体の新陳代謝能力低下により、こうやって毎年腹囲が増えて行くのですねぇ。

新しいお店作り、基本のキ

さて、本題です。

新しいお店を作る(創る)にはいくつかのステップを踏みながら、時には進み、時には立ち止まり、またある時には戻ってみたり…紆余曲折を経てゆくので、一概に「こんな流れで出来上がりま~す」って訳ではありません。

ただ、大体の場合は・・・

 ① 出店計画を練る
 ② 土地を探す
 ③ 土地を入手する
 ④ 設計をする
 ⑤ 建設工事を行う
 ⑥ 建物の完成後、準備をしてオープン!

という大きく6つのステップを踏みます。

各段階において語り尽くそうと思えば、そりゃもう色々なネタがあるのですが、不動産開発のテクニックは各企業ごとの秘匿事項なので、今日は、足掛かりとなる①を中心にオーソドックスな部分に限定してツラツラと記してみます。

出店計画を練るとは?

「出店計画」は我々小売業にとって、大切な事業の礎です。

どの企業も、概ね中期の経営戦略に基づき、具体的な出店計画を決めています。

大手チェーンの場合は、IRなんかで「◯期に◯店舗、〇億円」なんて掲げていますね。

ステークホルダーにとっては、店舗数(消費者やマーケットにとってのイメージUP)も利益額(株主の配当利益)も、自分が所有している株式の価値へ直接影響を及ぼす重要ファクターです。

なので、「計画の実現性」や「計画と進捗との整合性」は、個人資産(又は法人資産)の安全確保のためにも、とても大切な投資の判断要素のひとつとなります。

コープさっぽろの出店計画とは?

ではコープさっぽろにとっての「出店計画」はどのようなものなのでしょうか?

我々にとっての株主に当たるのは、約190万人の組合員さんたちです。

中期計画に基づく出店を実現するにあたり、とても大切なことは「経営存続のため金銭面での利益」を少しでも多く上げることに加え、「組合員さんの生活を守り続ける」、「北海道の社会持続性を守り続ける」ことに寄与できることでもあります。

時には、普通の企業なら躊躇するような出店であっても検討を行うことがありますが、それはコープさっぽろが行政を加えた「四方よし」を念頭に経営活動を行う組織であるが故であり、求められるのは「地域が抱えている問題の本質を理解し解決方法を考える」ということなのだと思います。

難しいのは、利便性のみを追求し続けると、(多くの場合)損益のバランスが崩れがちであるという実態です。

そこに店舗が必要だ!と考える場合、「どうすれば経済的に成立しうるのか?」について、「ゼロを1にする発想」を念頭に、あらゆる方面から検討を重ねることになります。

環境要因をつかみ、既存の収益構造に捕らわれることなく、他社の成功事例や、全く新しい投資形態などなど・・・「その不動産固有の与件」に対して、多方面からメリット・デメリットを拾い集め、無尽蔵に組み合わせ、トライ&エラーを繰り返し、成立可能となる形態が無いか?について模索し続けます。

具体例に話を落とし込むと・・・。

例えば、商圏の年間個人消費は何億円くらいか?将来の人口動態は?年齢構成比は?世帯人数は?競合店の位置関係は?競合店の売上は?それらによるマーケットの寡占状況は?などによりコープがどの様な規模の店舗を作った場合、どの程度の供給と利益を見込む事が出来るか?について検証を行います。

そこで一定の安全性を確保できるとなると、次の段階では投資規模の試算を行います。

土地は買うべきか?借りるべきか?建物は自社で建てるべきか?誰かに建ててもらって借りるべきか?建物以外(駐車場、看板など)の工事は誰が行うのか?についての組立も行います。

また、社会情勢の予測に基づく建築コストや資材納期、各種設備の入手形態や取得経路なども想定しておきます。

特に投資額は、店舗の場合、最長34年間(=鉄骨造建物の減価償却期間)に渡り店舗のコスト構造に影響を及ぼすため、慎重な試算と社会情勢の検証が求められます。

構成比の高い投資項目では、想定値を数%見誤るだけで、標準的な店舗レベルでも数千万円の誤差が発生してしまいます・・・

併せて行うのは収入と支出の具体的な試算です。

コープのマーチャンダイジング、計画地のニーズで想定される構成比、想定客数動向に基づく荒利率など、結果は相乗積に基づくので、シミュレーション条件の精度を上げてゆけば、四則演算で勝手に結果が決まってゆきますが、問題はその中身の整合性です。

机上計算なので「絵に描いた餅」を描くのは簡単ですが、それぞれの設定値一つ一つに対して、「なぜその数値を想定するのか?」の裏付けを説明できるレベルの結果でなければ、開店後、計画とかけ離れた損益構造になってしまう恐れがあります。

店長経験がある人なら「そうだよね!」と言ってもらえそうですが、日々のあらゆる活動の積み重ねの結果が店舗損益であり、逆を返せば 「店舗損益の因数分解」を行うことで、営業活動をある程度理解することは可能です。

そこから個別因子であるイレギュラー要素を引っこ抜けば純粋な営業コスト構造が見えるので、そこをベースに、今度は計画店舗のコストを一つ一つ積み重ねてゆくわけです。

このあたりの手法は人それぞれで、そもそも未来のことを描くわけですから、どの手法が正解と言えるものは存在しません。

私の妄想の仕方

私の場合は、「山崎商店」で店を営業したらどうできるかな?どうするかな?という「妄想」に基づきます。

個人的に大切にしているのは「どうなるかな?」という受動的思考では無く、「どうしたい」という能動的思考で考えるというスタンスです。

全くチャレンジの無い新店経営は無いはず、という個人的思い込みなのですが・・・

人員体制は?コストコントロールのブレ幅は?商品構成は?どのような品物をどのように売る?その時の利益イメージは?部門構成比は?物流コストはどうなる?想定される光熱費は?など。

ここに、店舗ではアン・コントローラブルとなる固定費を加えてみて、仮の店舗損益を組立てます。

設定要素のちょっとした違いで結果はコロコロと変化します。

店舗本部や商品本部から意見を聞き取りながら半年から1年以上もかけ、何度もブラッシュアップを繰り返し、最低でも10~15モデル程度、通常は20モデル以上を作成し、最終的な出店の是非判断に耐えうる損益試算を完成させます。

計画はあくまでも計画。

それでも、1年以上かけて検証や外部交渉などを進めて辿り着いた結果が「止めた方が良い」となるケースもあります。

散々苦労し続けた結果が「水の泡」になるわけですから、普通ならモチベーションが下がるように思われるかもしれませんが、この様な結果を導き出せたことは「経営にとっての危険を回避できた」ことに他ならないので、個人的には十分な達成感を得られる業務という理解ですね。

ちなみに、出店の形態を変更して再度ゼロからやり直すということも多々あります。

「やまはな店」は計画段階では本当に色々な形態を想定し、恐らく今までで一番多くの試算を行った店舗かと・・・

ベースとなる出店損益のシミュレーションと土地の取得実務以降、新築実務は別チームに引継いでしまったのですが、コープさっぽろが全社一丸となり中央区の一等地へ出店を実現出来たという事実を目の当たりにしたときには、まさに「感無量」!

今年最大の成果のひとつだと、しみじみ思っています・・・

こんな感じで出店計画が具体化すると、実現化に向け次のステップに進んでゆくわけですが、この話は長くなるのでまたの機会に。

オープン当日のやまはな店
やまはな店の入口

今年1年、力を入れていたこと

あ、個人的には「大惣菜化プロジェクト」に力を入れてました。
新規デザインにチャレンジさせていただいた「平岡店」とか・・・

全体レイアウトの一部変更まで予算を許可していただいた「恵み野店」とか・・・

「開発の仕事は良く分からない」という方がほとんどかと思います。

実際、皆さんと接点を持つ業務はごく一部であり、多岐に渡る外部との調整や交渉が割と多いので、私自身もこの仕事については、一言二言では表現できないと思っています。

今回ご紹介した業務は、全体のごく一部ですが、少しでも開発のことを分かっていただけると幸いです。

「キャラの立った人」が多い部署ですが、「開発本部で仕事をしてみたい!」という方がいらっしゃいましたら、誰でもウエルカムですのでお申し出くださいっ!

来年も新店・改装、一部「口に出せない仕事」で、お腹が満たされそうな予感しかありませんが、業界プロフェッショナルの皆様、雑種強勢の皆様が持つトランザクティブメモリーを最大限に活用させていただき、成果につなげてゆきたいと思います!

ちょっと早いですが、皆様、メリークリスマス!

文:山崎



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