祝!2022年度ロジスティクス大賞受賞!「クラウド型共通システム活用」は、努力の結集だった。~受賞者に課題と打開策を聞いてみた。
生活協同組合コープさっぽろの関連会社、北海道ロジサービス株式会社と、株式会社TSUNAGUTEは、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会が主催する「2022年度ロジスティクス大賞」において、「ロジスティクス大賞」を受賞しました!
この賞、物流業界ではなかなか権威ある賞だということで、本当にうれしい限りですー!
北海道ロジサービス株式会社は、コープさっぽろの店舗、宅配などの物流配送業務を一手に担っている会社です!
そして、株式会社TSUNAGUTEさんは、今回ロジサービスと一緒に脱!ペーパーレスの仕組みを作り運営支援してくださっているパートナー企業です。
今回は、この大賞受賞を機に、この二つの会社のご担当者に色々と聞いてみましたよ!
北海道ロジサービスからは、執行役員 専務取締役の髙橋さん、企画管理部 人財管理G マネージャーの冨木さん、TSUNAGUTEさんからは、代表取締役の春木屋さんが対応してくださいました!
まずは、大賞受賞おめでとうございます!率直は感想を教えてください!
(TSUNAGUTE春木屋さん:以下、春木屋さん)
今回の賞は、物流業界ではトップに位置づいていて、とても権威あるものです。なので、大変嬉しく思うということ。そして、2024年に訪れる物流問題もあるので、世の中の流れが変われば良いと思っています。さらには、今回のような具体的な事例をこれを機に知ってもらえたらと思います。
(北海道ロジサービス髙橋さん:以下、髙橋さん)
物流の中では、「これが獲れたらすごいな!」という賞なので、TSUNAGUTEさんと一緒にやってきたことが評価されて、数百社の会社の皆さんも連携したことで受賞できたことは大変うれしいですし、関わってくださった皆さんに感謝もしています。
ただ、これはあくまで「第1歩」だとも思っています。
受賞したからといって、特にものすごい効果がでているかというと実際にはこれからなので。
ただ、この仕組みが、日本全体に普及していくとものすごい効果を生み出せるはずです。
なので、これを知っていただける機会を作っていただいたなと思っています。
受賞は、「認識されるスタートラインに立てた」ということ。
そもそもの課題はなんだったのか?
(髙橋さん)課題という部分で行くと、物流と言えど、コープさっぽろと同様、通常業務を全てDX(事務作業、物流効率化など)していきたい!というのが大前提にあります。TSUNAGUTEさんも同じような目線で物流の課題を見ていたと思っています。
「同じような目線」とは?
(髙橋さん)物流の庫内業務だったり、事務系業務(ペーパーレス化など)も全体で考えるというところが、同じだったと認識しています。
「物流はアナログが多い」ー例えばどんなところが?
(春木屋さん)一般的な話しも含めてですが、自社も含めて、他社さんとのやり取りでのデータ連携ができていない!という事でしょうか。例えば、皆さんのわかりやすいところで言うと、何か宅配された際に、箱の中に「納品書」が紙で入っていましたよね。最近はそれが入っていないようになってきています。その代わりにWebで納品のお知らせが来るようになってきています。ただ、BtoBの物流では、今でも納品書を紙で持ってくるんですよ。それに、受け取り側がハンコを押して「受け取りましたよ」となるわけです。このような行為がまだまだ残っているのが実態です。ここのポイントは、「自社だけで解決や改善はできない」ということです。連携する会社さんも一緒に改善いただかなくてはいけないのです。これが、例として一番わかりやすいかもしれないですね。
物流は、各社のリレー。だから自社だけでの改善は難しい!だから、同じデータ連携環境にしたい。
(春木屋さん)実際に、この実態は、日本全国どこでも殆どが同じような状態だと思います。多くの会社さんが「企業を越えてのデータ連携」までは行ってないです。
なるほど。では、連携できていないのはなぜなのでしょうか?
(春木屋さん)物流の課題として、こういったデジタル化の流れに対して否定する人は誰もいないんですよね。あわせて、国交省さんが総合物流施策大綱というのを出しているんです。「今後5年の日本の物流はこうなっていくべき、こんな取り組みをするべき」という指針を出しているんです。その中でもペーパーレスを推進するべき、企業間でのデータ連携をするべきという明言をされています。
総じて何が言いたいかというと、このような取り組みは世の中全体で進めるべきという認識ではあるということです。誰も否定はしないです。
じゃあ、なんで進まないか?と言うと、ここはDX推進の考え方と非常に似ていると思います。「何か仕組みを入れれば終わり」ではないわけです。企業のトップの考えと現場の考えを「ひとつ」にしないといけないんです。「一丸となってやっていく」と決めないといけないんです。ここができないと進められない、ここが連携推進ができづらい要因かもしれません。
進めるのが難しい会社・団体の皆さんは、この一致団結してトップも現場も同じ目線になれていない場合が多いのかもしれないです。「現状維持のバイアス」が壁になると思います。例えばトップが「このように変えて行こう」と言ったとしても、現場が腑に落ちていなかったり現状のやり方に不満を持っていないと進まないという考え方に相違がある場合も多いのではないかと。
北海道ロジサービスとしての考え方と課題は?
(髙橋さん)まず「やりたい」と思うスタートはありました。連携していただく運送会社さん、ベンダーさん、メーカーさんなどと一緒に改善しなくてはならないとは思っていました。こちらだけデータ化しても、相手の会社がfax送信してくれば、それをデータ化するという二度手間が起こるだけですから。そういった意味では「物流業界だけ」ではなく世の中全体で企業間連携をするということに高い壁があると思っていました。でも、逆に言うと変革のチャンスだとも捉えていました。
ちなみに、一緒に連携改善をすべきお取引企業は何社くらいあるんでしょうか?
(髙橋さん)数百社レベルですね。
「現状維持のバイアス」「企業間連携が要」、ここはどう打開していきましたか?
(春木屋さん)まず、2021年1月頃、「こういった取り組みを始めたいです」とベンダーさんに伝えました。ベンダーさんから各メーカーさんへ連絡をしていただきました。それと並行して各企業向けにアンケートも行いました。「このような取り組みについていかがですか?」というような内容です。そのアンケート内容を踏まえて、改善も進めました。例えば、もう少しわかりやすくしようなど。更に同時進行でほぼ毎週「説明会」を実施しました。これは、北海道ロジサービスさんと一緒に進めました。「説明会」では、実際にどういうことをやるのか?するとどうなるのか?を詳しく説明しました。ただし、この「説明会」だけで全てをご理解いただけるわけではないので、説明会後は、こちらから直接メーカーさんに伺って取り組みのもう少し詳しい説明をしたり、不安な部分をお聞きしたりして個別にも調整をしていきました。なので商談数で行くと400社くらい実施しました。実際には、この400社が1回の打ち合わせで終わらないこともありました。1つの会社2~3回だったので結果、1000回は超えていると思います。さらに、つながりのある会社さんの情報を聞き、関係性も理解していくようにしました。例えば、メーカーさんと話して「私たちはここの物流会社さんとも連携している」と聞けば、その会社へもご説明に伺うなどですね。こうすることで、一連の流れで同じ仕組みで改善ができることになります。これらの説明を1社1社丁寧にやってきたということです。
この丁寧な説明は期間にしてどのくらいかかったんでしょうか?
(春木屋さん)約1年くらいだと思います。説明会は30回以上は実施したと思います。説明会は1回につき30分~1時間で行いました。
(髙橋さん)最初の案内や説明会は、コープさっぽろとして皆さんに周知したことろから始まりました。まずは、私たちの方針をご理解いただくことから始めました。
正直、前半は同意していただけず、手応えが悪かったです。この実状を正確に把握するためにリスト化して進捗(同意状況)を確認していきました。それをコープさっぽろとしても理解して、あらゆるところで今回の連携メリットを発信していきました。更には役員にも相談をして進め方の方法についても指南いただきました。今回の案件は、沢山の企業の同意を得ないとできないので、担当者だけではなく各方面から、この取り組みのメリットを伝えていく必要があったのです。
(春木屋さん)説明会では、進捗が悪い(=同意いただけない)状況や、様々な忌憚のないご意見を伺うことによって、それを受け止め細かなブラッシュアップをしていきました。それで今のカタチ(連携ツール)に2021年9月頃になりました。すると、その頃から各社さんの同意もいただけるようになり進捗(合意)が進み始めたんです。3月からスタートですから、説明会を開始してから約1年くらいかかったということですね。
(髙橋さん)正直、時間はかかったなという印象はあります。
結果オーライで、3月に開始したけれど、ここが一番大変だった!という点はどこでしょうか?
(春木屋さん)最初、取組開始したときはある程度情報発信すれば「できる」と思っていました。システムが今度からこうなりますよ!と伝えれば大丈夫だとも思っていました。今思えば、甘い考えかもしれないのですが、、、笑。
ただ、今回の件は、日本のどのメーカーさんにとっても、「やったことのない、見た事もない初めての事」だったわけです。なので、そもそも話をされても「想像ができない」ーここから始まるわけです。自分たちの業務がどう変わるかがわからない、そんな中で、誰がこの担当者になるべきかもわからない、実際に現状の業務で困っていることさえわかっていない、という、「わからずじまいの状況」だったんですよね。だから、現場の実態と今回の新しい提案が噛み合わない(理解されにくい)というのはありました。ーここが、もっと簡単にわかってくれるはずというのが実は、違ったという点でしょうか。なので、反省点でもありますが、最初からもっとわかりやすく説明できるように提案の用意をするべきだったかなと思いました。
最初は「伝票をペーパーレスにします」という言い方をしていたのですが、「伝票」と言う言葉ひとつとっても、立場で解釈が違っていたんです。僕の場合の印象は、「納品伝票」と思っていました。でもメーカーさんだと「売掛・買掛の伝票ですか?」と聞かれるわけです。あとは、「宅配会社の伝票のことですか?」と聞かれることも。つまり、いろんな想像ができてしまうということが分かりました。でも実際にはいま出た「伝票」一つとっても、全然使い方やフローも、登場人物も違うわけですよね。このような「思い込み」をなくして提案書を改善していきました。
(髙橋さん)強いてあげるのであれば、現場のメンバーに正確に知ってもらうということでしょうか?大切にしたのは、ただシステムを変えるということを伝えるのではなく、そのことで何か変わりどう良くなるのかをきちんと説明するように心がけました。少なからず、仕組みが変わるということに抵抗感を持たれる方もいらっしゃるので。
ロジサービスでは、現場(実際に利用する方々)に、理解いただくためにどのような事をされましたか?
(冨木さん:北海道ロジサービス)ロジとして、専務(髙橋さん)と確認しながら、どういう立ち位置でどういう風に進めていけばいいのか?を考えました。丁寧に、現場の皆さんへの使い方の説明する機会を作るようにしました。TUNAGUTEさんが実施された各メーカーさんの説明会とは別に、内部での説明会を担当しました。
現場で働くパートナーさんの抵抗感をなくするために「これをやったら、こうなるんですよ」というイメージを共有できるように配慮しました。現状の問題点をまずはみんなで共有してもらうこともしました。その上で、「これを使うとこうなるんだよ」ということは具体的にしました。ラクになるポイントも整理して伝えました。ここはとても大事です笑。
今後の構想を教えてください!
(春木屋さん)TUNAGUTEでは、今回のようなサービス(伝票のペーパーレス化システム)を出していることもあり、「日本全国でペーパーレスが物流で進んできたらどうなるのか?」というのを関西大学の教授と試算したんです。すると、日本全体で実施で年間3533億円のコストが削減されるという結果がでたんですよ。物流は、人財難という課題もありますので、経済効果だけではなく人手不足という点でも資するものになっていくのではないかと思っています。
伝票のペーパーレス化と同時に、トラックドライバーの方の「待機時間」を減らすということも改善点として行いました。トラック予約受付システムの導入なのですが、改善後は半分の時間になってきています。60分だったのが30分まで減らせることもわかってきました。
そもそも北海道ロジサービスさんは、国交省調査の全国平均よりは待機時間は短いのです。一般的にはドライバーさんはひとつの拠点で荷下ろしや手続きなど含めて平均1時間半くらい滞在することになるのですが、ロジサービスさんは60分なんです。ここを更に今回の改善で30分まで減らせることがわかったんです。納品しにくるドライバーさんの労働環境は、かなり改善していると言えます。
(髙橋さん)このことは、うちだけではなくサプライチェーン全体の改善効果になりますよね。
(春木屋さん)そうですね。今回のことは非常に意義のある取り組みだと思っています。冒頭にもお話したとおり、「手間がかかっている」ということは関わる方皆さん認識しているんです。「思ってるんだけど、誰もやっていなかった」という世界に、今回のような事例ができたということなんですよね。事例ができればそれを伝えることができるわけです。
これは日本の社会への貢献になると思っています。なので、今回の受賞で知っていただくというのは本当に有難いと思っています。
最後に。
誰もが課題だなと思っていることなのに、色々な理由で手を付けていないことって世の中には沢山あるよなーと、今回の取材で改めて思いました。でもひとつ風穴をあけることによって、風向きが変わり改善が加速するんだということも。とてもわかりやすい事例です。TUNAGUTEさん、北海道ロジサービスとのパートナーシップがステキですね。改善するときにはこの「一緒に進めるメンバー」の志と信頼関係が重要です。
そして、その取組みが今回大賞受賞という大きな成果にもつながりました!
春木屋さん、髙橋さんはそれでも謙虚で、「まだまだ一歩踏み出したばかり」と言います。でも、止まっていたものが動き出す最初の一歩が一番大事なのではないかと思いました!今後の拡大に期待です!!