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【辛口注意】ダイソーを6年掛けて内製化した丸本は、コープさっぽろのITを見てどう思ったか


2013年にダイソーに入社し、ベンダーに丸投げ状態から内製化を進めた丸本健二郎氏は、7年後、北の大地にいた。コープさっぽろを支えるさまざまなシステムの現状を把握するためだ。

AWSのマネージドサービスを最大限活用したサーバレス、柔軟さを重視したマイクロサービス化など、ダイソーの目指す姿を6年掛けて実現してきた丸本氏の目に、今のコープさっぽろはどう映っているのか。丸本氏のメモをのぞいてみた。

個別最適から全体最適へ――コープさっぽろが抱える技術課題

店舗の裏側では複数の発注システム、帳票システムが存在し、全体最適化がなされていない。原因は、個々のプロジェクトが部分最適で進められ、全体設計がなされていないことにあると推測される。

ハードウェアに関しても、用途に応じた最適な機器、配備数を再考し、利用するスタッフが混乱しないようシンプルな構成にすべきだろう。

ハード、ソフト、そしてデータの繋がりを俯瞰し、全体最適へと向かう必要がある。

店舗システムの課題
新システム構築の際には、ホストを切り崩していくという裏タスクも存在するはずだが、ホストを消し去る将来視点がないまま進んでいる。原因は、短期的なプロジェクトスコープが中長期の方針とうまく重ねられていないからだと推測。

店舗と宅配が縦割りになっているように見える。お互いが「自分たちは頑張っている」という言い訳の上で成り立っているように見えてしまった。

オープンシステムになってわかりにくくなったという現場の声。属人化するスクラッチと、汎用的なパッケージの使い分けへの理解が必要。

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発注システムの課題
発注システムは4つ存在し、それぞれ異なる端末で操作している。理由は、特定のシステムがOSのバージョンアップに対応できないため。

システムごとに端末の使い分けを要求するというのは、利便性としてどうなのか。機器代やそれをコントロールする運用費も安くないはず。ここでも、それぞれのハードウェア資源を共通で考える全体視点が薄いように見える。発注用のタブレット端末は8台。かなり減らせそう。

また、自動発注では解決できない別システムの問題が、その別システムに伝わっていない。各システムだけでは解決できない悩みを全体として拾う仕組みが必要。

宅配システムの課題
2つの異なる端末が存在する。タブレットは新人しか触らないとのこと。少しもったいない。

宅配ルートは手動で作成。負担になっていないなら良いけど、ドライバーの増減や急な休みなど、調整が大変なのではと想像。自動割り振りができたら便利かな?

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帳票システムの課題
帳票システムも複数存在し、それぞれで見えること、できることがバラバラ。要求されることを定義し、必要な仕組みを洗い出す必要がある。

・Viewer機能……それぞれ一から考えるのではなく、定形として準備されていること、それをカスタマイズできる仕組み
・Data鮮度……リアルタイムデータを提供するためのシステムアーキテクチャ設計(まず、コープさっぽろとして全体のデータ設計が必要)
・Alert機能……データを集めて描画するだけでなく、閾値を決めて、これを超過したらやべーとシステムがアラートを出すような仕組み

コープさっぽろのビジネスは、いい意味で「やべー」

ガチの経験者だけあって、技術面に関しては厳しい指摘が並ぶ。しかし、コープさっぽろのビジネスモデルや商品、将来性の話になると、とたんにメモは「やべー」の連発だ。

物流センター
AutoStoreは「おー」と思った。
https://youtu.be/gfXmDScA7_M

あれだけの土地と倉庫を持ってしても、AutoStoreのような仕組みが必要なんだな。物流システムは本格検討したことがないので、もっと現場の方の思想を聞いてみたいが、忙しそうだったのでちょっと遠慮。

宅配サービス
物流を使った圧倒的なビジネスモデルはマジでやばい、尊敬する。高齢化社会に向けて、宅配サービスはますます需要がありそう。Uber Eatsのようなサービスとの連携もあり得るかも。なんでもできちゃいそうなのがやばい。

エコセンター
エコセンターでは、コープさっぽろの店舗や宅配で発生する資源と、組合員さんに出していただく資源を回収し、再利用している。

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ゴミとして捨てられてしまうはずのダンボールや古着、紙パックなどを資源として回収し、利益3億とかやばい。会社もWIN、組合員は廃棄物を無料で回収されてWIN。

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スーパー
子供が生まれたらプレゼントがもらえるというのは、若い世代にもありがたい活動。コープさっぽろの事業全般に言えることだが、ビジネスを通じた社会貢献が素晴らしい。

飲むヨーグルトなんて今まで特段美味しいと思ったことがなかったのに、コープさっぽろのPBはやばかった。健康的で値段も手頃。あれなら毎日飲みたい。

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「フィラデルフィア 贅沢3層仕立ての濃厚クリーミーチーズ」がなかったのでオヨヨ? 北海道の人には不評なのかな?

高価な高級食パンの横で、サンドイッチ系はすごく安い。値段設定の感覚にオヨヨ? 販売データを見てみたい。

「ご近所やさい」のコーナーは、出品する農家の方が自分で価格を決めて、売り上げの8割が農家の方の収入に。手数料20%。Amazonやメルカリも10%程度。これも差別化戦略に繋がり、利益も高そう。聞けてないけど、仕入れ原価0が成り立ちそうで、すげーやばい。

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ドキドキ感がやばい
小売や宅配だけではなく、旅行、保険、葬儀など多角展開している。複数の事業の掛け合わせで新結合が起こせそうなドキドキ感。ここは、CDO 対馬さんの創造力がやばい。いろいろ聞いてみたいな。

顧客データが集まりまくってる。さらに顧客との距離が非常に近い。One to Oneマーケティングは、データを集めるところから難しくてうまくいかないものだと思っていたけど、ここなら実現できるんじゃないか。


――丸本氏のメモはここまで。丸本氏が綴った本音に、広報部の緒方は「シビレるほど的を得ていて清々しい! やりがいしかないコープさっぽろへようこそ!」と武者震いで応えた。

この状態からコープさっぽろはどう変わっていくのか、それは次回以降のお楽しみ。写真はなぜかサツドラの前だが、細かいことは気にしない。

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文・編集・写真:酒井真弓
メモ:丸本健二郎作